それぞれの色。

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 「めっちゃ美味しいよ。彼女が作ってくれたの。ていうか、蒼ちゃんの【みんな、岳海蒼丸の作品見て‼】ってテンションと、コメント書き込む人のそれが一緒なんじゃん? ねぇ、がっくんのお弁当も美味しそうだよ」  マルオが蒼ちゃんと拓海に『見てよ』と俺の弁当を指差した。  「えぇー。一緒なん? つか、いいなぁー。彼女のお手製弁当。てか、ホントだ。がっくんの弁当、めっさ美味そうな西京焼きが入ってる」  俺の弁当の中身を確認した蒼ちゃんが、薄っすら笑うと、  「がっくんの彼女、なかなか渋いね」  拓海もニヤニヤ笑いやがった。  「オカンの手作りだわ。安定して美味いわ。刺すぞ」  だから、箸を逆手に持ち、蒼ちゃんと拓海と、巻き添えにしてマルオにまで襲い掛かる。  「ごめんて。そうやって母親の味方するがっくん、なんか好きだわ」  蒼ちゃんが両手を合わせながら『なんか、好き』とか言うから、ふいに耳が赤くなってしまったところを、  「照れるなし」  拓海に見られて笑われ、  「がっくん、かわいいな」  マルオに愛でられる始末。そして、  「つか、俺とコメント書き込む人のテンションが一緒とは思えないんだけど。だって俺、作品を見て欲しい以外の自己顕示欲とか承認欲求とかそんなにないしな」  俺がまだ恥ずかしがっている真っ最中だというのに、蒼ちゃんにアッサリ話を戻された。
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