それぞれの色。

68/97
前へ
/377ページ
次へ
 「え? 蒼ちゃん、知らなかったの?」  マルオが、驚く蒼ちゃんに驚いていた。  「普通、一番最初に所属タレント確認しない?」  俺も蒼ちゃんにツッコむ。  「えぇー。見なくね? 事業内容とか提携会社とかしか目通ししてないわ」  表に出るのが嫌いなわけではないとは思うが、どっちかというと裏方志望の蒼ちゃんは、どんな有名人が所属しているかなど興味ないらしい。  「やっぱ、変わってるわ。蒼ちゃんは」  目の付け所の違う蒼ちゃんに感心する俺に、  「流石だよね」  マルオがコクコクと首を縦に振った。  「変人扱いすんな。つか、今日家族に話したら結果教えてね。てことで、もうそろそろ昼休みが終わるから一旦解散‼」  蒼ちゃんを笑うマルオと俺の頭を軽く叩くと、『次、移動教室だった』と言いながら蒼ちゃんがスクっと立ち上がった。  「昼休み、短すぎるだろ」  しかし、授業など受けたくない勉強嫌いの俺の腰は重い。  「はい、行きますよ」「さっさと立て」  そんな俺の両腕を、マルオと蒼ちゃんが持ち上げ、無理矢理立たせられ、引きずられ、歩かされた。  こんな平々凡々な俺らが、芸能事務所に所属…。全く想像が出来ない。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加