赤くて、茶色くて、黒い。

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 「まぁ、蒼ちゃんは1番忙しくしてるからね」  『頑張ってるもんね、蒼ちゃん』とマルオが蒼ちゃんの肩を抱くと、『マルオー‼』と蒼ちゃんがマルオに抱き着いた。  世間一般的には露出が多い拓海が忙しそうに見えただろうが、実際は蒼ちゃんの仕事量がダントツに多かった。脚本依頼は途切れる事がなく、事務所から『岳海蒼丸の舞台は今回は見送ろう』と追われるほど多忙だったにも関わらず、蒼ちゃんは『優先順位は岳海蒼丸が1位。舞台が流れるくらいなら、脚本の方を断る』と言って、岳海蒼丸の仕事もキッチリこなしていた。  『岳海蒼丸が1位』。これは拓海もマルオも俺も一緒だった。  拓海は岳海蒼丸の舞台と重なる仕事の依頼が来た時、かなり魅力的な役柄のオファーだったのに、『それでも蒼ちゃんの脚本の方が面白いから』とアッサリ断った。  マルオも岳海蒼丸の舞台期間は他の仕事は入れなかった。  俺は……他の仕事などなく、必然的に岳海蒼丸が1位になっていただけだが、仮にあったとしてもみんなと同じ気持ちだったと思う。
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