赤くて、茶色くて、黒い。

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 「だって蒼ちゃん、秋からの2クールぶっ通しのドラマの脚本の依頼受けたんでしょ?」  『つか、俺らと飲んでていいの?』とマルオが、酒を飲む蒼ちゃんの手を止めた。  「受けたねぇ。……無理かなぁ? 9月卒業も無理かなぁ⁉」  蒼ちゃんは、『俺、いつになったら卒業出来んの?』と嘆きながらも『今日は3人のお祝いだから飲んでもいいの‼』と酒を飲むのを止めようとしなかった。  蒼ちゃんには仕事がたくさんある。拓海とマルオにも決まっている仕事がいくつもある。何もないのは俺だけ。  俺は、周りの人間が就活を始めた時に、『岳海蒼丸の仕事があるから大丈夫』と言ってやらなかった。  年に1、2回しか舞台に出ていなかったくせに、事務所に所属していたがばっかりに、変な安心感を持っていたから。  それが不安に変わるのに、そう時間は掛からなかった。
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