赤くて、茶色くて、黒い。

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 「がっくんの声は通るから。がっくんは声が凄く良い。だから、声の仕事をしてみたらどうかなって思うんだ」  自分の声の良し悪しは分からないが、蒼ちゃんの言う通り、俺の地声は大きい方ではないのに、内緒話が周りに聞き取られてしまう声質をしているのは確かだった。  コソコソ話が出来ない自分の声を、俺はあまり好きではなかったが、蒼ちゃんは俺の声を『凄く良い』と言ってくれた。    なんだかとても嬉しくて、変な自信が沸いてくる。  「……声の仕事かぁ。教育番組とかでナレーションしたら、親とかめちゃめちゃ喜ぶだろうな」  入ってもいない架空の仕事の話で、喜ぶ家族の笑顔を思い浮かべていると、  「事務所にお願いしてボイスレッスンしてもらえば? がっくんは声は良いけど、テクニックがない。今オーディションを受けに行っても本場の人には敵わない。しっかり土台を作って実力つけてから勝負したら、がっくんは無敵だと思う。それくらい、がっくんの声は本当に良いから」  少しだけ出てきた俺のやる気を見逃さなかった蒼ちゃんが、力強い言葉で俺の背中を押した。
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