赤くて、茶色くて、黒い。

15/44
前へ
/377ページ
次へ
 それから半年、岳海蒼丸の舞台を挟みながら、ボイスレッスンに通い続けた。  『ナレーションの仕事をしてみたい』と始めたボイスレッスンだったが、マネージャーに『折角だから歌も上手い方がいい』と言われ、最近は中学の合唱コンクールの時に先生に言われた『つむじから声を出せ』という、無理な上に理解不能な技の習得を再度試みている。  『口は顔の下の方にくっついているのに、どうやってつむじから声を出すんだよ。不可能だろ、物理的に』と頭を悩ませながらも、レッスンは楽しく続けている。  ダメ元でナレーションのオーディションもいくつも受けているが、箸にも棒にもかかっていない。  ちなみに蒼ちゃんは、9月に卒業出来なかった。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加