赤くて、茶色くて、黒い。

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 蒼ちゃんの通夜と告別式が執り行われる会場へ行くと、拓海が丁度受付で名前を記入しているところだった。  「……昨日、寝られた?」  拓海の隣に行き、俺も氏名を書き込む。  「薄情なほど、普通に寝られた。ご飯もしっかり食った。親友が死んだっていうのにな。でも、全然ピンとこないんだよ。ニュース見ても、余所事みたいでさ。全然悲しくならないんだ。葬式したら、悲しくなるのかな。……何か、怖いな。蒼ちゃんが死んじゃった事、実感するの怖いな。……違う。怖いというより、嫌だ」  拓海の言葉に、自分が何故蒼ちゃんの死を実感出来ないのかを気付かされる。  そうだ。俺は蒼ちゃんの死が悲しい以前に、嫌なんだ。
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