赤くて、茶色くて、黒い。

40/44
前へ
/377ページ
次へ
 「俺らが泣けないみたいに、人によって悲しみ方だって違うんじゃないの? 悲しいからこんな時にそんな話をしたのかもよ。拓海こそ、こんな時にそんな話するなよ。ますます泣けなくなる。イラっとしただろうが」  膝で拓海のケツを軽くど突くと、  「俺じゃない。蒼ちゃんが言ってたの」  『やめろ』と言いながら、拓海が右手で俺の脚を払った。  「……は?」  「半年くらい前に、蒼ちゃんが好きだったバンドのボーカルが死んじゃったじゃん。その時、そのバンドのコメント欄を見ながら言ってたんだよ。『死んだらコメント欄がこんな事になっちゃうんだな。おちおち死んでらんないな』って。……なのに、何をおちおち死んでるんだよ、蒼ちゃん」  その時、拓海の目から一粒地面に落ちた。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加