赤くて、茶色くて、黒い。

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 そんなマルオを待つと宣言した拓海は、相変わらず精力的に働いている。『蒼ちゃんがくれたチャンスだから、足を止めたくない』と言っていた。  蒼ちゃんの四十九日の日、拓海が事務所の人から聞いた話を教えてくれたのだが、高2の時に事務所にスカウトされたのは、俺ら4人ではなく実は蒼ちゃんだけだったらしい。それを、『4人で活動させてください』と蒼ちゃんが頼み込んだらしいのだ。  『蒼ちゃんが俺らに最後に言った言葉、憶えてる? 『黙って待ってろ』だよ。俺は待つ。マルオの事も、蒼ちゃんの事も待つ。ずーっと待つ。だから、岳海蒼丸は絶対に無くさない』と拓海は、岳海蒼丸の活動を心待ちにしながら、毎日芝居に磨きをかけている。  俺はと言うと、オーディションに受かった海外ドラマの吹き替えを、予定通り頑張っている。声優をやるのは初めてだから、失敗ばかりで落ち込んだりもするけれど、オーディションの合格を喜んでくれた蒼ちゃんの笑顔を思い出しては、自分を振るい立たせている。  声優の仕事の初日、拓海から【結局がっくんの合格祝い出来てないね。ごめんね。頑張れ、ディッくん】というLINEがきた。マルオも【頑張れていない俺に言われたくないかもしれないけど、応援してる。俺もがっくんの声が好き】とLINEしてくれて、心が折れそうになる度にそのメッセージを読んでいる。  蒼ちゃんに見せたかったな。どこかで見ていてくれないかなと蒼ちゃんへの想いは募るばかりで、悲しみも収まる気配がないけれど、仲間のおかげでなんとかやって行けそうだ。  仲間は本当に大事だ。だから何がなんでも、岳海蒼丸は死守する。
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