赤が、点る。

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 「……誰ですか? それ」  白を切ろうと試みる。というか、切れると思った。だって私は、この話を家族にすら話した事がない。まして、初対面の自分と関わる機会もない若い男の子に話すわけもない。飲み屋で泥酔したとしても、絶対にない。だって、今までそんな事1度もなかったのだから。  「とぼけますね、佐波野ミソノさん。やっと報われますよ、佐波野さんの小説。この前応募した作品、大賞を取りますよ」  しかし、男の子は私に白を切らせてくれなかった。  目の前の男の子が何者なのか、脳みそをフル回転させる。  「……出版社の方ですか? 私、応募書類に職場の記入はしてないはずなんですが、どうしてここに?」  私の秘密を知っている可能性がある人は、出版社の人間だけだった。
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