それぞれの色。

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 「拓海さぁ。俺が拓海を主役にするの、拓海の顔がいいからって理由だけだと思ってる?」  蒼ちゃんは、俺の意見に乗らずに拓海に問いかけた。  「……」  無言で視線を蒼ちゃんの方に移す拓海。  「世の中にはさ、個性的な役者さんとか、魅力的な俳優さんがいっぱいいてさ、そういう人を見る度に『すげぇな。かっこいいな』って憧れたり尊敬したりするじゃん。  拓海の演技って、凄く自然で灰汁が無くて、インパクトは弱いかもしれないけど、『俺、演技上手いっしょ』感がなくて、俺、本当に好きなんだよね。台詞もさ、俺が書いた脚本なのに、拓海が考えて喋ってるみたいに言うしさ。  個性派を目指しても別にいいと思うけど、今の演技の仕方は捨てないで欲しいな。  どうしたって癖のあるものの方が目立っちゃうから、自然なものは目に付き辛いよ。だから、見つけてもらうのに時間がかかるんだよ。だから焦る事も、自分を否定する必要もない」  『しーんぱーいないさー』と蒼ちゃんが笑った。
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