それぞれの色。

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 「俺たちは有名人じゃないじゃん。誰も知らない無名の高校生だよ。消えるも何も、存在を知られてないじゃん。だから、どんな手を使っても目立たなきゃ。夢を叶える為には、どんな事をしても誰かの目に留まらなきゃ。カッコつけるのはそれからだよ」  蒼ちゃんが真剣なトーンで拓海に言い返す。    そうだ。忘れかけていたけれど、蒼ちゃんと拓海は、俺やマルオと違って本気で演劇の世界を目指している人たちだった。  さっきの蒼ちゃんの『次はどんなカッコで出ようかな』はただ楽しく撮影がしたかったわけではなく、夢に近付く為の発言だったんだ。  「…蒼ちゃんの言い分も分かるけど…」  それでも過度の演出なしで撮りたい拓海の気持ちも分かる。    「……」  撮影が好きな気持ちは、4人共同じなのだと思う。だけど、蒼ちゃんや拓海の様に夢が定まっていないマルオと俺は、何となく口を出すが出来なかった。  そしてチャイムが鳴り、答えが見つからないままそれぞれの教室へまた戻る。
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