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四月二十日の午前十二時、ちょうど日が移り変わった深夜。
蛍光灯はついていて、リビングルームは十分明るいんだけど、それを打ち消すような沈み切った面持ちが五つ、並んでいる。
「タイムリミットまで、あと二十四時間か……」
喉からくぐもった声をだすこの男は望月湊。あだ名はモッチ。男子テニス部の副部長で、わたしの彼氏だ。
茶髪の短髪を、イライラしながら掻きむしっている。
「沙希ちゃん、大丈夫、絶対に大丈夫だから……」
わたしの肩に手を添え、悲痛な表情で慰めてくれる彼女は矢作友里恵。あだ名はゆりっぺ。わたしが所属する女子テニス部のマネージャーで、唯一無二の親友だ。
モッチとの仲を、取り持ってくれたことがある。
「せ、先生! 沙希は助かるんですよね!? そうですよね!?」
「最善は尽くしているつもりです。落ち着いて」
わたしのお父さんとお母さんが、主治医である内倉先生に縋りついた。
内倉先生は、いつもと変わらぬ冷静さで、両親をなだめた。
そして、わたしこと成瀬沙希は、さっきから胸のあたりが締め付けられるような閉塞感に襲われていた。
心臓がどくどくと脈打ち、全身の血の巡りが高速なのを感覚していた。
あっ、きた――。
これで九十六回目なので、すぐに分かった。アレがくる。
わたしは嘔吐する寸前の人みたいに、一瞬顔を強張らせ、体をのけ反らせた。
あとは、流れに身を任せるしかない。
そして、わたしの甲高い声が、リビングを駆け抜けたのだ。
「コケーーーーっ!!」
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