しゃっくり100回

鶏吃逆

　突然だけど、しゃっくりの正式名称って知ってる？
『吃逆(きつぎゃく)』って言うんだって。きつぎゃく。早口で十回言ってみて？　ってなったら、多分四回目で噛むような語呂の悪さ。

　そのしゃっくり――吃逆って読みにくいからこっちにするね――は横隔膜の痙攣から引き起こされるもので、大抵は自然と収まる。
　まああえて自分から治そうとするのなら、鼻をつまんで水を飲んだりだとか、ゆっくり間隔をおいて深呼吸を繰り返したりだとか。
　でも、一番メジャーな方法はアレよね、なにかにびっくりして、その拍子にしゃっくりが治っちゃうやつ。

　で、ここまでやってしゃっくりが治らなかった場合、何万回か連続で繰り返した時点で、死に至ると噂されている。
　実際にはそれは嘘で、しゃっくり回数のギネス記録はアメリカ人のチャールズ・オズボーンさんが保持している四億三千万回なんだって。
　しかもこの人の死因は老衰で、しゃっくりは全くの無害だということが断定されたんだって。

　だからね。
　しゃっくりなんてものは病気には分類されず、単なる目のかゆみとか、鼻水がちょろっとでるレベルの、他愛のない現象だと思っていたんだ。

　――二十四日前に、あの病にさえかからなければ。