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お母さんは、本屋を営んでいた。
本屋自体は小さかったけれど評判がよくて、毎日たくさんのお客さんがやってきたものだ。
お母さんが入院して以来は叔母さんが引き継いで私が手伝う形だったけれども、あまり上手くはいかなかった。
どちらも、本屋の仕事には全く詳しくなかったからだ。
それでも
「可愛い幼稚園児の女の子が店番をしている」
と噂になり、むしろ客足は増えたぐらいだから損にはならなかった。
私にとっては、思い出のある本屋さん。
それでもお母さんが死んでショックを受けた私は、その本屋をたたむことに決めた。
辛い思いでがよみがえってしまうからだ。
結局本は叔母さんが紹介してくれた業者に売り、棚は分解して家具等に作り直してもらい、看板は捨て、店の中は専門の業者の人に頼んですっかり改装してもらい普通の部屋にした。
そんな中、唯一残したのはあの魔法の本だ。
どうしても捨てられなかった____というのは、建前というものだ。
実際には、自分の机の引き出しの奥底にしまい込んだまま忘れてしまっていただけというのが本音というか、事実。
思い出したのは、リフォームから何からすっかり終わって、自分の机でぼんやりしている時だった。
正確には、叔母さんも帰ってしまい私の机も整理しないとかなと思って引き出しの中身を全部ばらまけたときだ。
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