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「……お忘れになっているようだから云っておきますけれど、私はいっさい剣を扱わないんですよ。
私ごときが朱の皇子の軍に加わったところで、あの遨将と尊将に相対する戦力になるとも思えませんがねぇ」
「いや、てめーには剣以上に切れる武器がある」
焔華はもぐもぐしながら自分のこめかみを指で突く。桃饅頭の屑が、パラパラとこめかみから落ちる。
「その頭がよ。遨将と尊将の二人の頭を足しても、てめぇ一人の頭脳には敵わねえ。そもそも戦は10割のうち7、8割は剣じゃなく、頭で戦うモンだ。そうだろ」
「……大きく評価して頂いて有難いことは有難いんですがねえ。遨将と尊将だってそんなに馬鹿じゃありませんよ。
四天の頭脳の比率でいうなら、私と君を足した所で、遨将と尊将を足した分には及ばないのじゃないですか」
「エ? どういう意味だよ?」
「いいえ、分からないなら、いいです」
焔華は皿に盛られた新しい桃饅頭を掴みかけて、飛翠の視線に気づき、手を止めた。
少し居ずまいを正し、尋ねる。
「――飛翠。……その、てめぇが昨夜云ってた事だけどよ」
「何の事でしたかね」
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