今宵ひと晩、きみを

4/17
前へ
/17ページ
次へ
「……きみと私、それから遨将と尊将。そもそも我々四名の釣合いなんて、取る必要があるんでしょうか?  だらだらと無駄に長い戦を続けているように見えますが、結局あの戦の落としどころは何処にあるんです? どちらの大将も天帝の血を引く皇子とはいえ、要は片方が生き残れば後継者は決まるわけでしょう。  ――朱軍にも蒼軍にもしがらみの無い、いち部外者の意見として極論を云わせてもらいますがね。そこまで戦力に差が出てきているならむしろ私が蒼の皇子側について、戦力の比重を極端に傾けたほうがてっとり早く戦が終わると思うんですよ。  ――いや、むしろ、きみ自身が朱の皇子へのこだわりを捨てて蒼軍に寝返るという手もあるな。それなら戦争を早期に決着できる上に、私も面倒な俗事に関与せずにすむ。次代の天帝も無事決まって、万々歳でしょう。  なぜきみはそこまで朱の皇子にこだわるんです?  力の均衡などというものを考えているから、いつまで経ってもあちら側の世界は無駄死にの連鎖から逃れられないんですよ」 「飛翠!」  自論をぶつ飛翠を、焔華は遮る。  飛翠を真っ向から睨み据え、胡坐(あぐら)の膝上に置いた手を拳に握りしめた。 「朱の皇子はたしかに戦巧者じゃねえが、人の上に立つ者としての“器”がある。遨将と尊将は、蒼の皇子の見た目の派手さに目を眩まされて、そいつを見抜けてねえんだ。  てめぇも同じだ。皇子らの本質を知らないから“勝ちつつある者に味方すりゃいい”なんて平気な顔して云えるんだよ。  飛翠――てめぇも一度でいいから本気で誰かのために(・・・・・・・・・)生きてみろ。  そしたら、俺の云ってることや、俺が朱皇子にこだわる理由が、てめぇにもきっと分かる」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加