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「――カチンと来ますね、その云い方。腕力馬鹿の君が私に、偉そうに説教ですか」
飛翠は組んでいた腕を外し、焔華の逆立った赤髪を掴んで仰向けた。
自分の体を犠牲にしてまで誰かに尽くそうとする、焔華のその情熱が、飛翠には理解できない。
ただ、そこまで焔華に尽くされているのかと思うと、朱の皇子に対する嫉妬心がもやもやと湧き上がってくる。
焔華は上向かされ、苦しげに喘いだ。
その唇を、飛翠が上から塞ぐ。
息を求めてひくつく口腔に、飛翠の舌がめり込んでくる。
唾液が口元からあふれ、焔華の顎をつたい落ちてゆく。
「……んっ、く……っふ」
焔華は自分の口から溢れ出る喘ぎ声が、自分でも信じられない。自分のどこからこんな声が出てくるのかと、恥ずかしさに頬が染まる。
唇が離れたかと思うや、掴まれていた髪ごと、寝台に突き飛ばされた。
投げ出された焔華の上体に、飛翠が上から覆いかぶさってくる。
抵抗しようとすると腕を掴まれて、瞬時に後ろへ捩じりあげられた。
腕力では自分の方が上のはず。しかし今は、さきほどの行為の前に呑まされた痺れ薬のせいか、思うように躯の自由が効かない。
「本気で誰かのために生きてみろ、ですって? ――焔華、じゃあ君は、私が今まで本気で誰かを慕ったり、尊敬したり、共に在りたいと感じたことが無いと思ってるんですか?」
「……ッ、飛、翠…痛いっ……」
「馬鹿にしないでください。きみの方こそ私の本質をまったく見抜けていないじゃありませんか?
何故、なんのために私が――こんなことをしていると思ってるんです」
「―――?」
焔華は身を固くした。
コイツ、何が云いたいんだ――
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