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今宵ひと晩、きみを
焔華はうっすらと目を開けた。
何処かで、水の流れる音がしている。
翠晶宮の奥殿の暗い寝室で、彼は静謐な闇に包まれ、褥の中に横たわっていた。
身を起こそうとすると、下半身に疼痛が走る。
「……ッ」
彼は低く呻いて、起きるのを諦め天蓋を見上げる。呑まされた痺れ薬が、まだ少し残っているようだ。
自分の身に起こったことが、まだ信じられない。
自分と――親友だと思っていた男との間に訪れた関係の変化を、未だ受け入れられずにいた。
築いてきた友情関係に、こんな形で罅が入るとは思ってもいなかった。
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