百戦錬磨のエクスタシー

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「し、新条ゆかりさんっ! あなたが好きです、僕と、付き合って下さい!!」  片手を突き出した姿勢で、勢いよく頭を下げる男子。  まぁまぁ、手が震えちゃって、可愛らしいこと。  だけどあなた、私がどんな女か知らずに告ってきたわけじゃないんでしょ? 「却下。」  即答する私。 「残念だけど無理。だって私とあなた、絶対に釣り合わないでしょ?」  それは慢心でも思い込みでもなく、どうしようもない事実。  私こと新条ゆかりは、天才だ。  学業優秀、運動神経抜群、才色兼備を地で往く学校一の美少女だ。  そう言い切ってしまえるのも、現に周りがそのように評価するのだから仕方がない。  勉強は適当にやっても学内十位以内、スポーツも習い事も何をやらせても一流超え。  身長は177センチ、すらりとした理想的な曲線美のモデル体型。  駅前でスカウトされて、読モの経験もあり。鳥類園に投げ込まれたみたいな気分がして、嫌になって辞めちゃったけど。  こんな風に数え上げればキリがないが、  とにかく私は真面目にやらずとも、何でも楽々と頂点を極めてしまえるのだ。  物心つく前からそんな感じ。  正直、何かに熱中しろっていう方が無理ってもの。  だから“釣り合わない”っていうのは嘘偽りない本心であり、ただの事実。  これまで付き合ってあげた子も、良不良関係なく、みんな最後には嫉妬か絶望で終わった。  ゆえに私、新条ゆかりは天才美少女の名を欲しいがままに、何一つ面白みのない高校生活を送っている。
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