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「クックックッ、どうだ、俺の本当の姿に驚いたか!」
「えっ? いや、悪魔って本当にいるんだなぁって。
でもあんたが死ななくて良かったわ。不要な罪を被せられても困るし」
「な、なにをぉ……余裕ぶった態度をとりやがって……」
悪魔がぴりぴりと額に黒筋を立てる。
たしかに一瞬焦った。でも今のは本心。
別に悪魔がいたからどうなるって言うの?
私に告白して断られ動揺する程度の奴だ、どうせその力量とやらもたかが知れているに決まっている。
私が平然としていると、悪魔は真っ黒い翼でバサバサ風を起こしながら、いやらしーく頬を歪めた。
「も、もう許さないからな、新条ゆかり。これからお前に呪いをかけてやる」
「あらどんな呪い? 初めてのことって、私とっても楽しみなの」
どうせ、どんな逆境も、一瞬で乗り越えてしまうのだろうけれど。
「そんなふざけた態度を取れるのも今の内だぞ。
いいか、俺はずっとお前を見守っていた。
そしてお前がこれまで男から告白された回数は、先ほど振った少年で99回目、そして俺でなんと100回目だ」
そんなに振ってたんだ、日常茶飯事すぎて気付かなかったわ。
「お前は人を無下にし過ぎた。とうに悪魔の域を超えているのだ。
そこで俺は考えた。万が一俺がこの姿を見せて、なおも断るようであれば、俺はお前に人間の感情がないと判断することにした。
「なにせお前は、何をやっても感動できず、ゆえに誰とも分かり合えない、孤高の存在。だが俺たち悪魔は、人の苦痛や動揺といった負の心の動きを糧に生きている。
「それなのにお前は、自分がまったく動揺しないばかりか、周りにも“当たり前”を強いる。
新条ゆかりがいることで、周りはやる気をなくし、絶望の味から遠ざかって、妙にドライな性格に染まっていく。
「そうした場や人からは、負のエネルギーをすくいとることが難しいのだ」
どうやら私は、知らず知らず悪魔も恐れるほどの影響力を及ぼしていたらしい。
美と才能って、罪深いものね。
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