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「そこでだ、お前に今一度問う。俺を受け入れる気があるか?」
「却下。あり得ない。さっきより遥かに醜い姿をして何言ってるの?
っていうかあんたさっき告白してきたよね?
呪いをかけるって言ってなかったっけ?
今になって、主張がすごく言い訳がましいんだけど?」
「クッ……惚れた弱みに、痛い所を突いてくる……」
悪魔は動揺したが、すぐにあの下品な笑い声を響かせる。
「よかろう、もう躊躇う必要もなし。諦めもついた。
これよりお前に呪いをかける。
新条ゆかり……お前はこれから“心の処女”となるのだ!」
「心の処女。」私はつい反応してしまう。「あんた、もしかして変態?」
「いまさら気付いてももう遅い。
この呪いにかかった以上、何を見ても、何を聞いても、
それを “はじめて経験する” 緊張と高揚を覚えざるを得ないのだ」
「あら、けっこう楽しそうに思えるのは気のせい?」
私はあっけらかんと言った。
それは極めた武芸も、芸術も、一からやり直しってことでしょ?
もう見終わっちゃったドラマも、読み終えたマンガも、
見るたびに新しい気持ちで取り組めるってことでしょ?
それむしろなんて最高?
私は何をしても即座に達人の域に達してしまうけど、
それでもそこに行き着くまでの一瞬は、そこそこ充実感を覚えたりする。
単にその後、持続する必要性が感じられなくなるだけなのだ。
本当に感動できるなら、それに越したことはない。
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