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「クックックッ。お前はまだ何も分かっていない。
すべてが初めてということは、どんな相手に告白されても、
まるではじめてそれを経験するウブな乙女のように、ドキドキしてしまうということなのだ。
「その気がなくとも、ついつい頷いてしまうに違いない。
なにせ一切の感受性がリセットされてしまうのだからなぁ」
「はうっ!? それは確かに恐ろしい……」
恐ろしさのあまり、変な声が出てしまった。
男どもの間に、“新条ゆかりは誰にでもOKを出す!”という噂が流れる様を想像する。
孤高の女どころか、それじゃあ私、ただのビッチじゃん……。
たしかに、けっこうヤバいかも……。
「ククッ、お前が振ったのは全部で百人。
よって新しいことに百回心から感動し、絶頂するまで、
お前は何に対しても赤子のごとく敏感に反応するようになるのだ」
「ちょ、ちょっと待って、ビッチは嫌……」
「後悔しても、もう遅い! せーいりゃああ!!」
空手家のような掛け声と共に、悪魔の両手からいくつもの光の環が放たれる。
その輝くフラフープのようなものが、私の体を上から下へと舐め回すように滑り抜けていく。
「……さむっ!!」
終わると、なんだか全身がむずむずっとした。
妙に肌が敏感になっている。
嫌らしそうな悪魔だから、きっとその魔法も変態的な趣向が凝らされていたのだろうな。
そんなことを考えながら顔を上げたら、もう悪魔の姿はどこにもなかった。
きっととっておきの技を使ったのに、それほど私が動じなかったのを見て、悔しがって空を飛んで逃げていったに違いない。
私は気持ちを切り替え、すっかり日の落ちてしまった屋上をあとにする。
そして開け放たれた扉をくぐり、階段を下りようとして。
私は悲鳴をあげて卒倒した。
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