百戦錬磨のエクスタシー

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 がやがやと、聞こえるのだろう、この騒音。  本来であれば。  しかし今はぎゅんぎゅんとか、しゅわしゅわんひゅぅーん!って感じ。  うぅ死にたい……嘘だけど。  私は普段のように教室の一画に腰を下ろしながら、まるで文明の地に迷い込んだ未開人の気分だった。  周囲のにぎやかさが、心躍るような未知の音楽のように胸を高揚させる一方、また同時に脳みそを針で突かれるように刺激的すぎて困惑する。  やっぱり帰宅するべきだったのだろうか。  帰宅できればの話だけれど……。  昨日の放課後、悪魔に呪いをかけられた私は、階段の踊り場で倒れているところを発見されて今朝保健室へと運ばれた。  「階段怖い、暗闇怖い……」などとうわ言を呟いていたらしい。  その理由は、起きて自分の変化に注意を向け、ようやく理解した。  保健室の消毒液の香りが、鼻腔を通じて異様なまでに強烈に体中に浸透してきた。  まるでそのままホルマリン漬けにでもされてしまうのではないかというほどに。  体は無事のようね、なぁんて言って保健室の先生に額を触れられただけで、安堵と興奮で発狂しそうになった。  いや、百合とかそういうことじゃなくて。  単純に、誰かが自分に触れてくれた、接触することができた、というだけで感動して泣き出しそうになってしまったのだ。  そして彼女から、帰宅か出席かの二択を問われた際、  思い浮かべた教室の情景が、遊園地のようにきらきらと輝いて見えた。  それで出席一択。  不審がる先生に肩を借りて、恐るおそる階段を登る。  隣をすれ違う生徒が立てる微かな風に感動し、その匂いに興奮し、そして見えない津波のように何度でも押し寄せてくる人のざわめきに恐怖&狂喜し、一気に教室に飛び込んだ。  するとそのあまりの騒々しさに恐怖が勝り、泣き出して転がるように一階に降りようと駆け出して階段前で失神。  保健室でまた目覚めて怖さのあまり学校を飛び出して日差しのまぶしさに倒れそうになりながら校門の前の車に驚いて失神。  三度保健室で目を覚まし、もうずっとそこに留まっていようと決めたにも関わらず、騒がしい教室の話をちらとされただけで「行ってみたい!」という衝動に駆られ抜け出す。  そうして今に至る――。
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