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朝食を食べ終え、立ち上がる。 「ごちそう様でした」 何気ないこの挨拶がいつも皮肉に思えてしまう。我が家は毎朝大体同じ、固いパン二枚だ。貴族様の家ではパンに何か塗ったり挟んだりするらしい。小さい頃に絵本で見たからおおまかな絵面は想像できるけど、実際に目にした事はない。 立ち上がろうと椅子を引くと、ミシリと音が鳴った。テーブルもあちこちささくれている。木でできたそれらはかつてあったかもしれないあたたかみが失せ黒ずんでいる。 隣のファジュルさん家もきっと似たような内容の食事を摂り、似たように傷んだ家具を使っているだろう。その隣のウェスペルさん家も、更にその隣の家の人も。この町は貧乏なのだ。
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