仲間たち

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仲間たち

「あら、けーちゃん早いじゃない」 「ママー、聞いてくれよぉ……!」  行きつけのゲイバーのカウンターに前のめりで倒れ込むように座ると、坊主頭で髭の濃いガチムチのママが心配しながら「とりあえずビール飲んで」と一杯出す。ジョッキで一気飲みしたところで、顔馴染みの面々が俺の両隣に座ってきた。 「どうしたんだよ、けーくん。珍しく荒れてんじゃん」  と俺の肩にぽんと軽く手を置いたのは、俺がこの店に来るようになって仲良くなったカズ。イギリスのクォーターで金髪碧眼長身のイケメンだが、初対面でバリタチ宣言した俺に「俺もタチだから友達な」と、初めから友人として接した。 「僕が慰めてあげよっかぁ? けーくんのためなら頑張るし」 「うっせえ、女の格好したやつはタイプじゃねえって言ってるだろ」  マスカラだけでつけまつげをしたかのような睫毛バシバシの、髪の長い化粧をした肩を出したニットワンピース姿の、女の子のような男が肩に頭を乗っけてくる。ゆう、と名乗っているが、本名は勇二郎というらしい。女装趣味のある彼は全くタイプじゃないので、こんな誘いも一種の挨拶のように対応している。 「のろけ話以外ならいくらでも聞いてあげるわよ」  と二杯目のビールを出す。ぐいっと半分くらい飲んだ後、今日の話をする決意をした。 「……七年前、好きだったシゲって奴と会った」 「えっ、それって……けーちゃんがタチになった原因作った子じゃないのっ!」  ママがびっくりしてカウンター越しに身を乗り出す。カズとゆうは「どういうこと?」ときょとんとしている。 「けーちゃん、ほんとはタチじゃないのよ。ただ、そのシゲちゃんのことが忘れられなくて、処女守ってるの。そのためにタチやってるのよね?」  その問いに、小さく頷く。自分のことながら、恥ずかしい。 「マジ? けーくんって遊び人のチンカス野郎だと思ってたんだけど!」 「僕は既に三桁の奴とやってるクズだと思ってた! 健気過ぎるじゃん! ヤバイ、泣ける!」  どさくさに紛れて酷い言われようだが、まあ事実なので言い返す気力もないし流すことにした。
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