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百
突然だけど、私の幼馴染みの百田君は「百」が大好きだ。
趣味は百人一首で、好きな花は百日草。
毎晩ラジオで百物語を聞いては、愛読書の百科事典を読みあさり、テストは百点しか取らない。
百均でアルバイトをしながら、百円硬貨を眺めつつ、百円貯金箱でいつか百万円貯めて、将来お百姓様(いつの時代?)になるのが夢。
かと思えば、まだ十八歳になったばかりなのに、「早く百歳になりたいなぁ」なんて呟いてる。
もちろん、くしゃみする時は「ひゃっくしょん!」だ。
何をするにも、百、百、百、百、百。
もう百に取り憑かれていると言っても過言じゃない。
例え百歩譲ったとしても……
おっと。
危ない危ない、私も影響を受けちゃってるのかも。
小さい頃からずっと一緒だったから仕方ないか。
だから、もうすぐ眼を覚ますよね。
私は病院のベッドの上の彼の手をぎゅっと握る。
彼が交通事故で意識不明の重体となり、今日で百日目。
ほら、今日は君の大好きな百日目だよ。
早く起きないと、終わっちゃうよ。
また百人一首しよう。
また一緒に貯金箱の百円数えよう。
また面白いくしゃみ聞かせてよ。
百歳まで、ううん、もっとずっと一緒にいたいよ。
そして私の頬を、もう何百回目かの涙が通りすぎていった。
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