憧憬

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 「雫先輩、フレンチトーストってこんなに美味しいものでしたっけ」  一口食べて、後輩が言う。 「そんなに美味しい? 私はあいにくこの味のしか食べたことがないから」 「はい、とっても。こんなに美味しいフレンチトースト食べたの、初めてです」  笑顔で頷く後輩に、問いかけてみる。 「それはよかった。──ねえ後輩、百年後にも、フレンチトーストはあるのかしら」 「うーん、そうですね……」  言いながら、後輩は大きめにカットした一口をゆっくり咀嚼して考える。そして食べ終えたのち、 「すごい進化したのがありそうです」 「なるほど。《すごい進化した》フレンチトーストは、果たしてフレンチトーストと呼べるのかしら。もはや別の料理ではなくって?」  少し意地悪な質問だったかな、と思いつつ、メープルシロップをかけすぎたトーストを食べて反応を待つ。 「……そもそもフレンチトーストの定義って何なんでしょうね」 「えー、知らないのー? だっさー! 私も知らなーい」  女子高生みたいなノリで言って、甘すぎるトーストを食む。 「雫先輩にダサいって言われた。つらい。……って雫先輩も知らないんじゃないですか!」  朝から華麗にノリツッコミを決めた後輩は、早くも食後のカフェオレを啜っている。ミルクたっぷりの甘いカフェオレ。 「後で調べればよいわ。──百年後だったら、ネコ型ロボットがすぐに答えてくれるのかしら」 「現代でも、検索したらすぐに答えが出てくる魔法の板があります」 「ああ、あれね。あの光る板」  
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