百歳の君、十歳の僕。

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 ***  そして、今。  僕はカプセルに乗り込み、ボタンを操作しているのである。  この世界に、来なくなってしまった朝を。今から僕がこのタイムマシンに乗って呼び戻しに行くのだ。  きっと此処に存在する僕は、世界の矛盾によって消えてしまうけれど。彼女と過ごした百年は、何処にも残らなくなってしまうかもしれないけれど。 ――これから来る夜明けが……僕等が生きた、百年の証だ。  新しい世界で目覚めることが出来たなら。そこできっと僕は君を見つけて“おはよう”を伝えに行こう。  そしてしっかりと抱きしめるのだ。もう二度と失くさないように、この手の中の宝物を――今度こそ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加