百歳の君、十歳の僕。

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 ***  怪物を倒し、人々を助け、しかしその助けた人々が助けた端から死んでいく現実を見つめながらも。運命共同体となった僕達は荒れ果てていく世界を旅して、一心不乱に戦い続けた。  そしてようやく辿り着くことになるのである。世界をこんな滅茶苦茶に壊してくれた、恐ろしい伝染病の正体は。ある製薬会社が、とある国に大金で売りつけるために開発した生物兵器であったということを。その威力を試すために小さな町を使って実験を行おうとしたところ、想像以上の規模で病が広がり研究員にも感染。アウトブレイクが爆発的に広がり、進化を続けるウイルスに対応しきることができる――僕達の世界を破壊していったと、そういうことだったのである。  そして。破壊されつくした某国の研究所で、僕達が見つけたものはそれだけではなかった。 『のっくん!これ……これってまさか、タイムマシンの設計図じゃないの……!?』  この国は、時間遡行を行う術を独自研究していたのだ。このままでは世界はウイルスに食い尽くされる。地球は死の惑星に変わってしまうことだろう。それを防ぐ最後の手段は――ウイルスが発明されるその日がいつ、何処であるかを探し出し、存在そのものを抹消することしかない。例えその結果、今生きている自分達の存在そのものが失われてしまうかもしれないとしてもだ。  だが、タイムマシンの構想はできていても、研究所の人間たちは完成まで辿り着くことができなかったらしい。  この時、僕達はもうすぐ二十歳になろうという年になっていた。どうにか生き残っていた人達の元で、科学や生物学を中心とした知識を学び、少しでも真相究明に役立てたいと思っていた頃のことである。  決意は、言葉にするまでもなく――二人の間で固まっていた。 『しいちゃん。……僕達で、このタイムマシンを完成させよう。そうすればこの世界を救うことができるはずだ』  願ったことは、ただひとつ。  どうか全ての悲しい事に、悪い夢に――終止符を。
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