13 長い夏の始まり

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「オレ…泳げません。何なら最近やっと水の中で長いこと動けるようになったくらいだよ。」 「それ、本当?」 えぇっ、こんだけ恥ずかしいこと言ったってのに何なんすかその反応!?え、何、まさかとは思うけど、『この年なら誰でも泳げる』的な感じなの!?だとしたらオレだいぶ常識から外れてることになりますよ、二菜ぁ! 新太は顔を一気に赤くしてそのまま下を向いてよくわからない呪文みたいな言葉をぶつぶつ言い始めた。 「…今度、プール行こ?そこで教えてあげるから。大丈夫、林間学校には間に合わせるから。」 「え、あぁ…うん、ありがとう。」 本当に二菜はなんか悪いものでも食べたんじゃなかろうか?だって、二菜ってもっと辛辣な言葉を涼しい顔でさらっと言う(本人にマジで失礼)ようなヤツだろ? …二菜の乙女心、新太知らず ってことか。 二人はいつの間にか長居しすぎて、夕刻を通り越して夜になっていたことを忘れていた。 アイスのゴミを片付け、足早にそれぞれの部屋へと戻っていった。 ―寄宿舎・新太と蓮の部屋― 「こんな時間まで駄菓子屋にいる酔狂がどこにいるっていうんだこのアホぉ!今日の飯当番お前だろうがぁぁ!」 蓮は空腹のあまりかなり怒り気味なご様子だった。 「悪い悪い、アイスが美味しかったからついおかわりってヤツを…痛たたたたたた!やめ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 蓮は本気で引きちぎれそうなくらいの力で新太の耳を引っ張り、無言の圧力(というか九割殺気)を放っていた。 「い、今から簡単に作るから…待っててぇ!」 新太は大慌てで夕飯の支度を始めた。男女の寄宿舎がかなりの大きさを誇る理由は『各部屋に風呂とコンロ、トイレがある』ということだ。 後の必要器具は自分達で揃える仕組みだが、新太たちは家からあれやこれを持ち出していたのでパパっと作業に取りかかれた。
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