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13 長い夏の始まり
―男子寄宿舎・新太と蓮の部屋―
ミーンミンミンミーン…ミーンミンミンミーン…
臨海市の夏は早い。現在6月最終週だが、連日の気温は海に面した街にも関わらず、28~29.5℃を観測している。西区の方では食中毒警報、熱中症対策を呼び掛ける公報が流れているほどだ。
そして、新太たちが暮らしている中央区もまた、連日の平均気温は27.3℃ともはや真夏日の暑さだった。
今日から新太たちの学校は夏服および扇風機が解禁となるが、彼からしてみれば少しも嬉しくはなかった。
「なぁ蓮、今って7月?」
「いや、6月。それも最終週だけど?」
「は?…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
部屋どころか二年生フロア全域に新太の絶叫が響いた。
―その後、2-E教室―
「…よ、香織。それと二菜。」
「あ、四野くん、おはよう。あれ…背中におぶってる子って…」
「あぁ………三樹ぃ、二菜ぁ、おはよぉぉ」
新太は以前も暑さで体に不調を起こしたが、今回のそれは前回とは比にならないレベルだった。
「新太って、暑いのダメな人なんだ…」
「うん…小さい頃からねぇ…」
「しゃべり方まで変わってるじゃない!」
「俺に聞くなこのバカが!俺だってコイツのことまだよく分からないとこあるんだよ!」
蓮も蓮で暑さには弱いが新太と違い、単にキレやすさが通常の倍になり、キレ具合も相当恐ろしいことになる。
「相変わらず口悪すぎよ、四野くん!そんなんじゃ社会でやっていけないわよ!」
「うっせぇわ!夏が終わりゃあちったぁましになるんだよ!それまで我慢しろ!」
「出来ないから言ってるんでしょ!」
「とにかく俺は暑いのゴメンなんだよゴラァ!」
初っぱなから全開でぶちギレた蓮の腹に二菜の猛烈ストレートキックが突き刺さった。
二菜はサウナすら冷やさんとばかりの凄まじい殺気を出していた。しかも、目が完全に殺し屋の目になっていた。
「…二菜、テメェそれはやめろって何回言えば分かるんだよ。」
「学習しない蓮が悪い…私に悪気はない。」
今の二菜の殺気で体感温度が下がったのか、新太が机に突っ伏していた顔をあげた。
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