さよなら、スピカ

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ベッドから飛び起き、クローゼットの奥にしまった箱を引っ張り出す。 薄暗かった部屋の電気を点け、雑多に詰め込まれた本を掻き分けると、隙間から分厚い表紙が覗いた。 あった! もう何年も開いていない大きな黒い表紙。 その上部には「卒業記念」と金の箔押しが施されていた。 分厚い表紙を捲る。六年一組と書かれた集合写真。指で一人一人の顔を確認するが、その中に俺の姿はあっても、ハナイに似た奴はいなかった。 ハナイと出会ったのはいつだ? 月食を見る約束をしたって事は、五年前に出会ってるのは確か。 じゃあ何で覚えていない? たかだか五年前だぞ? 記憶を辿ろうとすればする程、夜の闇に包まれていくように頭の中が暗くなる。 アルバムのページを捲る。見知った顔が次々鮮明さを取り戻す。心臓の鼓動は速くなるのに、ページを捲る俺の手は止まっていた。 鞄からスマホを取り出す。電話帳を開き数件しか無い名前を辿る。アルバムに視線を落としたまま、俺はひとつの番号をタップした。 「あ、もしもし、久しぶり、」 その番号は、六年一組で一緒だった同じ高校の浦沢(うらさわ)。高校で番号を交換したのも、浦沢くらいだった。 「ちょっと訊きたい事があってさ───」
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