さよなら、スピカ

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学校に行く時間よりも早く家を出て、足早に駅に向かって歩く。自分の靴音が耳障りだった。 焦る呼吸音も、早朝なのに吹き出る汗も。 何かに咎められているような、早く思い出せと追い詰められているような。 得も言われぬ不安が込み上がってきて、渇いた口内に何度もペットボトルの水を流し込んだ。 駅は家から10分程で、見えてきたロータリーのタクシー乗り場で浦沢が手を挙げたのが分かった。 昔から勤勉で、小学校では学級委員。 温厚な性格だけど、言わなきゃならない事は臆さず言える。そんな強くて正直な奴。 だからなのか、中学、高校と疎遠になってきた友人達の中で、唯一浦沢とだけは連絡先を交換していた。 あれ……何で他の奴らと疎遠になったんだっけ?
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