さよなら、スピカ

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キンと痛むこめかみを摩りながら、浦沢の元へと駆け寄る。 「悪いな! 急にこんな話──」 手を挙げて立ち止まった俺の顔を見て浦沢は目を丸くした。 「星野(ほしの)、お前もう平気なのか?」 「平気って何が?」 「月森(・・)の事だよ、月森虹……」 心臓が壊れそうな程縮み上がり、胸の内側が握り潰されたように苦しくなる。 ──月森(つきもり) (こう) 知ってる名前だった。 だけどその名前で呼んだ事は無かった。 「カペラ……」 自然と口からこぼれる。 俺は月森をそう呼んでいた。 「懐かしいな、お前らいつも星の名前で呼びあってたもんな。名前のことで揶揄われてた月森を助けたのも星野だったし、いっつも二人でいるの見てたからさ、星野から電話が来た時、ようやくほっとしたんだよ」 浦沢が一体何の話をしているのか、俺にはさっぱり理解できない内容ばかりだった。 それなのに頭の中では聴き覚えのある声が響き続ける。 昨日初めて出会った───ハナイの声が。
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