さよなら、スピカ

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(こう)なんて、変な名前だろ?」 確かあの頃、転校して来た月森は下の名前でよく揶揄われていた。 「そうか? 俺なんて(すい)だぜ? 稲穂の穂で『すい』とか、読めないし。せめて彗星の彗の字が良かったなぁ」 だけど俺も負けないくらい変な名前だったわけで、むしろ月森の名前になりたいくらいだった。 星も好きだけど、月も虹も大好きで、その二つを名前に持つ月森が羨ましいくらい。 「星野って、名前通りの星好きなんだね」 「じゃあ月森は、月が好きとか?」 「正解! ってか月も星も好き!」 そして偶然なのか、苗字の影響なのか、俺たちは天体観測が共通の趣味で、 「俺も! じゃあさ、せっかくだし星のあだ名付けようぜ! 月森は虹だから……虹星のカペラだな」 「じゃあ星野は穂先って意味のスピカって呼ぶよ!」 いつしかお互いを星の名前で呼び合うほど、唯一無二の親友だったのに。 「それ、めちゃくちゃ気に入った!」 なんでその存在すら───俺は忘れてしまったのだろうか。
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