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門の前を通過しようとして、咄嗟に耳をそばだてる。
遠くからだんだんと近づいてくる、グラウンドを走っているような土を蹴る音。
やっぱ二宮金次郎?
残ったアイスを口に押し込み、息を潜めて校門の鉄柵を掴む。目を凝らした先に怪しい影がぬうっと現れた。
「おわっ!!」
「あれ、バレちった」
月明かりの下で徐々に鮮明になるジャージ姿の小柄な背には、薪ではなく大きな黒いバックパック。手には懐中電灯が握られていた。
ヘヘッとはにかむ笑顔は、どことなく見覚えがあった。
「あれ、お前……」
「お! もしかして同じ北高? 嬉しいなぁ、こっちの高校に転校して来てから、日が浅くて友達いないんだよね」
転校生? しかも俺と同じ北高?
一体どこで会ったのか、と細めた目に突然懐中電灯を向けられ、眩しくてウッと目を逸らした。
「あ、ごめんごめん。ほら、そこから入れるよ」
光が門の左側を照らす。門扉が僅かに開いていた。
「え、入れってこと?」
「ちょうど人手が欲しかったんだ。お礼はちゃんとするからさ、手伝ってよ!」
ヒヒッと悪戯な笑顔は、やっぱりどこか見覚えがあった。
「手伝うって、何を?」
「不法侵入!」
ニッと白い歯を見せて笑い、鍵束をジャラジャラと掲げて見せる。ギョッとして周囲を慌てて見回した。
「お前っ! それどこで手に入れたんだよ! バレたらヤバイだろ!」
門扉の向こう側に向かって潜めた声に力を入れる。怪訝な顔をする俺を見るなり、そいつは門扉を勢いよく開いた。
「頼むよ! 一度やってみたかったんだ! 学校の屋上にテント張って天体観測!」
「はぁ!? まさかその荷物って……」
「そう、テントだよテント! な、楽しそうだろ? 絶対バレないようにするからさ! 頼むよぉ」
「まぁ……別に」
「よっしゃ! 決まり!」
言い終える前にそいつはガッツポーズをして俺を中へと小手招いた。
嬉しそうに頬を緩めるそいつの言葉になぜだか既視感があった。その理由は間違いなく、どこかで聴いたことのあるセリフだったからだ。
──学校の屋上にさ、テント張って天体観測しようぜ
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