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「それ、青白くてスピカって星に似てる」
おもむろに胸元のネックレスを触る。
ただ何となく買った、何処にでもある一粒石のものだった。確かムーンストーンとか言うパワーストーン。
「なに、石に興味あんの?」
「違うよ。僕が興味があるのはスピカの方。実は今夜のメインはスピカを見る事なんだ!」
好奇心に溢れた瞳でハナイは空を見上げた。
つられるように見上げた夜空。
西の空に瞬く青白い星。
幾千と散らばる煌めきの中で、どうして俺はその星がスピカだと分かるのだろうか。
「君は、星に興味ある?」
──カペラだな
──スピカって呼ぶよ
ハナイの声に被さる様に、頭の奥で声が響く。キンとした痛みがこめかみに走る。
いつの会話なのか、誰と交わしたものなのか、全く記憶に無かった。
だけど確かに俺はスピカと呼ばれていて、その呼び名はもう二度と、聴きたく無いのは確かだった。
「星なんて大嫌いだ」
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