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無意識に吐き出した言葉に咄嗟に口を手で塞ぐ。出した言葉は戻せるわけもなく、ハナイと俺の間に数秒沈黙が訪れる。
「悪い……」
嫌な気持ちにさせてしまっただろう、と窺い見たハナイの顔は意外にも先程とさして変わりは無かった。
「そっかー。じゃあさ、月は? 月も嫌い?」
ハナイは首を傾げながら、笑顔で挑むような瞳を俺に向けていた。まるで俺が最初からその答えを言うのだと見抜いているかのように。
「月は……嫌いじゃない」
いつから俺は星が嫌いなんだっけ?
「じゃあ決まり! 明日の夜、一緒に月を見ようよ! 今日はテント設営だけにしてさ」
「何で……俺なんかと……」
いつから俺は月が好きなんだっけ?
「だって君と僕は同じだから」
言いながらハナイは校舎に向かって歩き出し、俺もその後を追うように歩を進めた。
どうしてハナイの誘いを断らなかったのか。
なんで俺とハナイが同じなのか。
結局何も分からないまま、俺たちは忍び込んだ校舎の屋上にテントを張った。
鼻歌まじりにテントを張るハナイの横で、タイトルも知らないその歌を、俺も無意識に口ずさんでいた。
──手をとった時、その繋ぎ目が僕の世界の真ん中になった
確かそんな歌詞だっただろうか。
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