第2章

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第2章

太陽がビル群を、オレンジ色に染め始めました。 ビルの窓ガラスが反射して、キラキラ派生しては煌めきます。 ハルナは、仙台の中心街の中央通りアーケードにやって来ました。 スケッチブックを小脇に抱え、スカイブルーのショルダーバッグを肩から掛けて… 仕事を終えたサラリーマンやOL、授業を終えた学生などの若者で賑わっています。 さまざまな雑音が、街の賑わいを誇張します。 ハルナはいつもの藤崎デパートの玄関から少し離れた場所に、ピンク色の花柄のバスタオルを敷いて座り、何枚かの画用紙を並べます。 それはハルナが描いたパステル画です。 似顔絵が色鉛筆で描かれています。 そして中央に、文章を書かいた画用紙を置きます。 「似顔絵描きます 1枚300円 ハーモニカによる1曲もサービス中」 ほとんどの通行人は、ハルナに目もくれません。 ときおり一瞥するだけです。 中には(さげす)み、(あわ)れみの薄笑いを浮かべて通り過ぎます。 女子高生たちの(ささや)きも聞こえます。 似顔絵って? 300円だって ……… たくましー なんかヤダー ……… しばらくすると、1人の中年男が立ち止まりました。 すでにやや縮れ気味の髪がほんの少し側面に残るだけの、銀縁メガネをして小太りでお腹も出ています。 ハルナを、じっと見つめます。 おい 1枚300円か? 高いなー ……… まあいいや 1枚描いてくれ ……… 本日、最初のお客様です。 はい ありがとうございます ……… ではこのイスに腰掛けて、しばらく動かずじっとしていてください ……… ハルナは、簡易な折りたたみ式のイスを置きました。 頭の薄い中年男は、面倒臭そうに座ります。 ……… 時間がないから早くしてくれ ……… はい かしこまりました ……… ハルナはスケッチブックを取り出し、色鉛筆で素早く描き始めます。 その間、中年男はハルナの全身を舐めるように見定めます。 細い身体のデニムのGジャンの奥の胸の膨らみ具合、ミモレ丈の少しふんわりした白いスカートに包まれた細い脚… 男は、銀縁メガネの細いひとえ(まなこ)に薄っすらとニヤケた表情を浮かべます。
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