第2章

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5分ほどでハルナは、パステル画を完成させました。 はい お待たせいたしました こちらでございます ……… ハルナは精一杯の笑顔を浮かべて、画用紙のパステル画を頭の薄い中年男の前に差し出しました。 なんだこりゃ? オレはこんな顔ではない なんでこんなに髪がないんだ ……… そ、それは お、お客様の特徴でございますので ……… ハルナは、焦ってしまいました。 しどろもどろです。 中年男は、そんなハルナを見てニヤリとします。 おい こんな絵じゃお金は払えない ……… しかしオレと付き合うなら 1万円払ってもいい こんな絵なんか描いていないで オレと付き合え ……… 1万円払うから へへへ ホテルへ行って楽しもうぜ ……… 中年男は強引に、ハルナの細い腕を(つか)みました。 !!! しかしその瞬間、ハルナは腕を激しく振って振りほどきます。 キッと中年男を睨みます。 お客様 気に入っていただけなかったのなら お金はいりません ……… わたしは、あなたのような心を持った男と 付き合う気持ちはさらさらありません ……… ハルナのやや大きな声と強い口調に、そばを通る人たちが振り返ります。 頭の薄い中年男も、嫌悪な周りの気配を感じました。 ちぇ! ブスのくせしてエラそうに こんな下手な絵描きやがって ……… 中年男はハルナから画用紙を奪うと、くしゃくしゃに丸めて投げつけました。 ハルナの頬をかすめ路上に転がります。 頭の薄い中年男は、素早く立ち上がると加齢臭を残して、そそくさと雑踏に消えました。
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