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「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした! 二度とこのようなことがないよう、よく言い聞かせますので……」
商店街の小さな本屋で、私は深く頭を垂れていた。
隣にぼんやり立ったままの、娘の青葉の腕をぐいっと引っ張る。一緒に頭を下げて謝罪するように促すが、逆にそれをはねつけられ、私はしかたなく力任せに娘の頭を押さえつけた。
「ちゃんと謝りなさい! それができないなら頭を下げて! あんた、高二にもなってそんなこともわからないなんて情けないわよ!」
それでも青葉は、かたくなに拒否してそっぽを向く。
私が少女のころからの顔見知りで、わが家の事情も知り得ている店主は、「まあまあ」と言いながら、白髪交じりの頭部を手のひらで撫で付け、困ったように笑った。
「お嬢さんは反省の色がないようだけど、まあでも、あんたは昔からのお得意さんだから、今回は特別だよ。家庭の事情はいろいろあるだろうけどさ。いいかい、万引きはれっきとした犯罪なんだよ」
店主は私に向けていた視線を青羽に移す。それに気づいてるはずなのに、青羽は口を真一文字に結んだまま、無言を貫いている。その生意気で頑な姿に舌打ちしたくなった。
「本当に、すみません。……ありがとうございました」
「二度目はないよ」と呟かれ、私はひたすら灰色の床を見つめるしかなかった。
「お嬢さんは出入り禁止にするけど、あんたは今後も変わらず買いに来てよ。これであんたまで来てくれなくなったら、許した意味がないからね」
私はもう一度、深々と頭を下げた。
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