百物語インザ常闇

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「はあ、長かったなあ! 話している最中は不思議と時間を感じなかったが、今思うと何十年もかかったような気さえするぜ」  エレキギターが言って、和太鼓も頷いた。 「まったくだ。軽い気持ちで始めて、最終的には意地だけで押し切った感じだが、もう二度と御免だな」 「ああ。でも、やり遂げたって感じで、なかなか感慨深いものもある。ロウソクもいよいよ最後の一本か。何だか一気に暗くなった気がするな」 「そうだな。でも何故か、急にお前の姿がよく見えるようになったぞ」 「本当だ。俺も見える。ハイライトでもされているみたいに、青白く輝いて見えるな。でもおかしいぞ。下半身だけは見えない」  エレキギターが首を傾げると、 「そういうお前もな」  と、サックスが指を差しながら言った。 「あはは。変なの。皆、上半身だけ浮いてるように見えるよ。これじゃあ、まるで……」  木琴が笑いながら言いかけた時、 「――ちょっと待って」  ピアノが激しいフォルテのように割り込んだ。そして、 「……あのさ、『青白く浮いている上半身』って、それも一種の怪談だよね? ということはつまり、これが百話目っていうことになっちゃうんじゃ……」  その時、どこからともなくふっと風が吹いて、最後のロウソクの火が消えた。 「あ……」  五つの短い音が綺麗なハーモニーを奏でたのを最後に、辺りは静まり返った。全ての気配は消え、暗闇だけが広がっている。  少しして、天井や壁の穴、窓や戸の隙間から、日の光とけたたましいセミの声が室内に流れ込んだ。穴だらけで今にも抜け落ちそうな床。その中央には、使い古したロウソクの残骸を囲むように、朽ち果てた五人分の白骨が……。
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