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そんな状況を見かねてか、サックスのような落ち着いたハスキーボイスがとうとう、
「それじゃあ、どうする? 仕方ないから、いい加減そろそろお開きにするか?」
と一同に尋ねた。
「ここまで来てお開きか。おいおい、今までの時間は何だったんだよ……」と和太鼓。
「だよなあ。序盤ならともかく、九十個まで来たんだぜ? 九十九話までもう少しのところだ。それに、途中で終えるのは良くないんじゃなかったか?」とエレキギター。
「でも、ここからあと九話も引き出せる?」
木琴が言って、
「……うーん。今から調べたりしたら駄目かな。インターネットでちょちょっとさ」
エレキギターがヘラヘラと言うが、
「いや、圏外でしょ。それに、ロウソク以外の明かりも禁止で、携帯電話の電源はオフにするってルールも決めたじゃない」
ピアノが鋭く切り捨て、また振り出しに戻った。
「やれやれ、八方塞がりか。終わるに終われんな。恐ろしや、百物語……」
サックスがぼそりと皮肉を呟くと、
「ああ、もう! こうなりゃ即興でも何でもいいから、とにかく考えようぜ!」
鼓舞するように和太鼓の声が響き渡った。
結局のところ、状況は何も変わらず、お先は真っ暗なまま。何としても百物語を完遂するという意思だけは明確で共有もできたが、また唸り声が飛び交う羽目になった。そしてそれも長続きはせず、再び陥る深い沈黙……。
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