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どれだけ時間が経ったのか、「ふと思ったんだが……」と不意にサックスが口を開いた。
「百物語を始めてから、どれくらい時間が経ったんだ? 仮に一話平均五分としても、九十話で四百五十分だろ? つまり、えーと……七時間半だ。零時ちょうどに始めたわけだから……もうとっくに朝なんじゃないか? それなのに辺りは真っ暗だぞ?」
「言われてみれば妙だな。途中で休憩を挟んだり、話が出て来なくなってだいぶグダついたりもしたから、実際は七時間半どころじゃないだろ。どうも時間の感覚がおかしいんだよな」エレキギターも訝しむ。
すると、「おい! ちょっと待てよ……」と和太鼓が急に声を弾ませて言った。
「……それってつまり、一種の不思議話じゃあないのか? つまり九十一話目ってことだろう! いいぞ、いいぞ。もっと他にないか?」
和太鼓は嬉しそうに、ロウソクを一本フッと吹き消す。
「なるほどな。こういうのでもいいわけか。それなら、俺も一つ気付いたことがあるぞ」
エレキギターが言う。
「このロウソクだよ。いよいよ残り九本になったわけだが、おかしいよな。長い時間ずっと燃え続けているはずなのに、全然短くなってないんだ」
「ん? 言われてみれば、確かにそうだな。どうして今まで気付かなかったんだろう……。まあいいか。よし、それが九十二話目だ」
和太鼓がまたロウソクを吹き消そうとすると、「ちょっと待った」とピアノがそれを制止した。
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