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「……やれやれ、ようやく盛り上がってきた感じだな。まあ、盛り上がってきたとは言っても、通夜や葬式みたいに静かなんだが……」
またサックスが皮肉のように呟くと、
「そういえば、そうだな。……というか、いくら何でも静か過ぎないか?」
と、和太鼓が気付いて言った。
「あれだけ騒がしかった虫の声もいつの間にか聞こえないし、互いの声以外には全く音がない。……いや、待て。音だけではなくて光もないんじゃないか? 今まで気にもならなかったが、見えるのはロウソクと火だけだ。それ以外には何も見えない。『消えた音』と『不自然な暗闇』。ずばり、これが九十四話と九十五話だな」
ふっとロウソクの火が二本消える。
「ロウソクと火以外に何も見えない……か。それどころかさ、手探りをしようとしても何の感覚もないんだよなあ。自分の手がどこにあるのかも分からなくなりそうだぜ。そういえば俺、荷物ってどうしたっけなあ?」
エレキギターが呑気に不思議がっていると、急に和太鼓が「おい!」と興奮気味に声を上げた。
「今感覚がないって言われて気が付いたんだが、これはすごいぞ。どうやっても立ち上がることができないんだ。足が痺れたってわけでもなく、むしろ身体は軽くて快調なのにな。どういうわけか、今いるこの場所を離れることができないんだ。試してみろよ。何とも不思議な感じだから」
和太鼓が呼び掛けてすぐに、他の面々からも「あ、本当だ」と次々に驚きの声が上がる。
「うわ、何かちょっと気持ち悪いかも……。手足の感覚がないから余計変な感じがする。『身体の感覚の喪失』と『その場を動けない』。これも怪談ってことだよね?」
木琴が言って、ロウソクの火がまた二本ふっと消えた。
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