1人が本棚に入れています
本棚に追加
「はあ、長かったなあ! 話している最中は不思議と時間を感じなかったが、今思うと何十年もかかったような気さえするぜ」
エレキギターが言って、和太鼓も頷いた。
「まったくだ。軽い気持ちで始めて、最終的には意地だけで押し切った感じだが、もう二度と御免だな」
「ああ。でも、やり遂げたって感じで、なかなか感慨深いものもある。ロウソクもいよいよ最後の一本か。何だか一気に暗くなった気がするな」
「そうだな。でも何故か、急にお前の姿がよく見えるようになったぞ」
「本当だ。俺も見える。ハイライトでもされているみたいに、青白く輝いて見えるな。でもおかしいぞ。下半身だけは見えない」
エレキギターが首を傾げると、
「そういうお前もな」
と、サックスが指を差しながら言った。
「あはは。変なの。皆、上半身だけ浮いてるように見えるよ。これじゃあ、まるで……」
木琴が笑いながら言いかけた時、
「――ちょっと待って」
ピアノが激しいフォルテのように割り込んだ。そして、
「……あのさ、『青白く浮いている上半身』って、それも一種の怪談だよね? ということはつまり、これが百話目っていうことになっちゃうんじゃ……」
その時、どこからともなくふっと風が吹いて、最後のロウソクの火が消えた。
「あ……」
五つの短い音が綺麗なハーモニーを奏でたのを最後に、辺りは静まり返った。全ての気配は消え、暗闇だけが広がっている。
少しして、天井や壁の穴、窓や戸の隙間から、日の光とけたたましいセミの声が室内に流れ込んだ。穴だらけで今にも抜け落ちそうな床。その中央には、使い古したロウソクの残骸を囲むように、朽ち果てた五人分の白骨が……。
最初のコメントを投稿しよう!