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 すっきりと晴れた空は遠くまで見渡せて、なぜか切なくなった。 「小田切さん」  夏とはまた違う乾いた空気に晒された五月の空を、昼休みに席からぼんやりと眺めていた。すると、隣の席の大窪君が私の名前を呼んだ。 「何?」 「さっきから何見てるの?」  大窪君はとても穏やかに笑う人で、その顔をみると私はまた切なくなる。 「空。いい天気だから空を見てたの」 「へぇ、俺、ぼうっと空なんか見てたら眠くなっちゃうよ」  机に頭を乗せて無邪気に見上げて来た彼の笑顔に、胸が痛くなる。  「また、あいつらイチャつきながら帰るんだろうな」  不意に大窪君が呟いた。 「え?」 「陽平と榊さん」  そう、私達は片想いをしている。大窪君は親友の彼女に、そして私はその大窪君に。 「あぁ、一緒に帰らなきゃいいのに。カップルと一緒になんて、誰だって嫌なんだから断れるでしょ?」  私は大窪君の顔をじっと見て言った。すると、彼は少し困ったように瞳を曇らせ、目を逸らす。 「でも、クラスが分かれてから、放課後だけだからな、会えるの。見たいんだ、榊さんの顔」  あぁ、私達は一緒だ。 「そっか、でも今日は私と帰らない?愚痴、聞いてあげる」  青く高い空は切なくなるけれど、ずっと、もっと見ていたいのだ。ありがとうと笑う彼に私の胸はまた、チクリと痛んだ。
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