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私の世界
「ねえ、これどこまで続くの?」
そこには、見渡す限りの“黒”があった。
きっと、“私の世界”。
私が生きていた世界には無かったものだ。
それは、例えれば砂漠のようなところ。
ただ砂が黒くて…あ、触れる墨みたいだ。
粒子が細かくてすくってもすぐに風で飛ばされてしまう。
虹色の風に。
「真琴ちゃん。ちゃんと座ってて。」
お姉さんに手を引かれ座り込む。
「船みたいだね。この乗り物。」
「あ、船…か。久しぶりに聞いたな。」
「じゃあ、なんて言うの?」
お姉さんは、下を向いたあと黒い砂を手ですくいながら言った。
「名前なんてないよ。」
風に吹かれた黒い砂を目で追いながら言った。
「お姉さんは??」
「恵…。なんてね。」
何かを思い出したかのように少し笑う。
「え…?」
小さすぎてあまり聞こえなかった声と悲しそうな表情に声が漏れた。
「恵、め ぐ みって言うの。」
「恵…さん。いい名前。」
腹出しの服からはあまり想像できない名前だった。
「私には似合わない…か。」
「そんなこと言ってないです。」
私がそう言うと彼女は、意地悪そうに微笑んだ。
「顔がそう言ってるよ」
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