不用意な一言

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「え、二人とも結婚するんですか。佐々くん、その、恋人がいるんでは? 年上の」 「古賀、落ち着け」 「見えるんじゃなくて嫌がってるんです」 「そうよそうよ」 「息ぴったりじゃないですか?」 「やめてよやめて」 「そうだそうだ」 「ほらあ」 「やめんか。さりげなく火に油注ぐよな、古賀。天然石油かよ」 「え、なにか言いました?」 「なんでもないよ……」 「そもそも時代遅れなのよ、許嫁なんて。漫画の世界にももうでてこないっつうの」 「許嫁なんですか!」 「タダシくんも、そのフレーズ使わないでくれる? 痒くなる」 「えええ、いいじゃないですか、ロマンじゃないですか。なんでまた許嫁に」 「よし、ここは俺が話そう──その昔、二つの寺の僧侶が恋仲になった。しかし二人とも男同士、さらに跡継ぎとなっては結ばれることはない。二人は諦めたが、どうしても繋がりが欲しかったそうな。跡継ぎのために結婚した彼らは、ゆくゆくはお互いに異性の子供ができたら結婚をさせようと誓いを交わす。お互いの寺の発展には、相互の親密さが鍵になるとかなんとか、わけわからん事言って説き伏せた──わりにはバレてるけどそこは置いといて──脈々とその風習は受け継がれてきた。しかし、不幸にも、今まで異性で結婚が可能な子孫は生まれてこなかった。そうして時を重ね、今、ようやく、二つの寺に女の子と男の子が生まれる──その名は佐々照美、東海林忍。遠き先祖の約束を果たすときが、今、訪れようとしていた──」
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